陽だまりの林檎姫
「あの、すみませんでした。」

「何に対してだ。」

とりあえずこの空気を何とかしようと謝罪した言葉に容赦ない追及がされる。

どうしよう。

心当たりがあり過ぎて何に対してと説明すればいいのか栢木には全く分からなかった。

北都の眉間のしわは更に深くなって余計に追い打ちをかけてくる。

「心当たりがあり過ぎて…分かりません。」

正直に胸の内を明かすと北都は目を細めた。

何という威圧だろうか、栢木は身を固くして手元に視線を落とす。

拳に力を込めて八方塞がりなこの状況をどうすればいいか必死で考えようとした。

「何故追いかけてきた。」

意外にも最初に口を開いたのは北都の方だ。

「え?」

「すぐに戻るから待機していろと伝えた筈だぞ。」

その言葉に栢木は目を見開いて口を開ける。

おかしい、自分が聞いていたものと話が違うではないか。

「外出を口止めされていたのでは?」

「口止め?」

北都の反応を見てもそれが間違いであったのだと分かる。

何がどうしてこうなったのだ。

人から人へと伝え聞く間に捉え方が変わってしまったのだろう、身に覚えがあることだが文句を言いたくなった。

それと同時に張りつめていた心が解放されて安堵に包まれる。

良かった、自分にだけ知らせないようにしていた訳ではなかった。

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