陽だまりの林檎姫
2.記憶に残る人
静寂が夜の深さを知らせても栢木の感覚はそれを受け流していた。
キリュウの関係者であろう人物が現れたのは昨日の事、栢木自身は姿を見ていないが不審に思った相麻製薬受付のケイトが栢木に知らせてくれた。
西訛りの言葉を話していたという事は間違いなく栢木の実家がある地域から来た人物だ。
それはキリュウと同じ、尚の事栢木を尋ねてきた人物がキリュウに関係しているのだと思っている。
「お嬢さん。」
窓をコンコンと叩いてタクミが逆さまに顔を出した。
「タクミ!?どうやって…ええ!?」
窓はあるけどテラスやバルコニーのない栢木の部屋にはタクミが足場とする場所などなかった。
驚いたことにタクミは屋根に上り寝ころんだ状態で栢木の部屋の窓を覗いていたのだ。
栢木は慌てて窓を開けると手を大きく振って招き、部屋の中へ入る様に促した。
「危ないから早く入って!」
「馬鹿言わないで下さいよ。そんなことしたら伯爵に絞殺されちゃう。」
あははと陽気に笑うタクミはまるで気にしていない様子だ。
「でも枠だけ借りますね。」
そう言って体を回転させると軽やかに窓枠へ足を付かせる。
「明日も一日長いんだから少しでも寝た方がいいと思うんですけどね。」
「タクミ、あの…。」
「ま、どうやらお嬢さんは眠れないようだから。話し相手にでもなろうと姿を見せた訳です。」
タクミの言葉に感極まった栢木は口元に力を入れて涙を堪えようと顔を赤くした。
まだまだ意地を張ろうとする栢木に笑みを返すとタクミは机の上に置かれた紙を見つめる。
少しクシャクシャになってしまったのは北都が握りしめたからだ。
「あれが受付嬢からの?」
「ええ。」
そう答えると栢木は机の方に向かいその手紙を取ってタクミに渡した。
キリュウの関係者であろう人物が現れたのは昨日の事、栢木自身は姿を見ていないが不審に思った相麻製薬受付のケイトが栢木に知らせてくれた。
西訛りの言葉を話していたという事は間違いなく栢木の実家がある地域から来た人物だ。
それはキリュウと同じ、尚の事栢木を尋ねてきた人物がキリュウに関係しているのだと思っている。
「お嬢さん。」
窓をコンコンと叩いてタクミが逆さまに顔を出した。
「タクミ!?どうやって…ええ!?」
窓はあるけどテラスやバルコニーのない栢木の部屋にはタクミが足場とする場所などなかった。
驚いたことにタクミは屋根に上り寝ころんだ状態で栢木の部屋の窓を覗いていたのだ。
栢木は慌てて窓を開けると手を大きく振って招き、部屋の中へ入る様に促した。
「危ないから早く入って!」
「馬鹿言わないで下さいよ。そんなことしたら伯爵に絞殺されちゃう。」
あははと陽気に笑うタクミはまるで気にしていない様子だ。
「でも枠だけ借りますね。」
そう言って体を回転させると軽やかに窓枠へ足を付かせる。
「明日も一日長いんだから少しでも寝た方がいいと思うんですけどね。」
「タクミ、あの…。」
「ま、どうやらお嬢さんは眠れないようだから。話し相手にでもなろうと姿を見せた訳です。」
タクミの言葉に感極まった栢木は口元に力を入れて涙を堪えようと顔を赤くした。
まだまだ意地を張ろうとする栢木に笑みを返すとタクミは机の上に置かれた紙を見つめる。
少しクシャクシャになってしまったのは北都が握りしめたからだ。
「あれが受付嬢からの?」
「ええ。」
そう答えると栢木は机の方に向かいその手紙を取ってタクミに渡した。