陽だまりの林檎姫
必死になって止めようとする2人の気持ちに応えて北都はゆっくりと起こす。

その精悍な顔つきは今まで見たことが無いほど立派で思わず見惚れてしまう程だ。

「これからも、2人には仕えていってほしい。」

ゆっくりと、マリーとダンそれぞれと目を合わせて北都は丁寧にその気持ちを言葉にする。

その深い気持ちの表し方にマリーの目から涙がにじみ出ていた。

「勿論でございます。」

「はい。」

感極まったのはダンも同じだったようだ。

鼻をすする音が響く応接間で北都はくすぐったそうに優しい微笑みを見せた。

「感謝します。」

そう言って再び下げた頭を、今度は2人共止めようとはしない。

ただ思いを受け止めて静かな部屋は確かな温度を深めていった。




「あーもう、どうしよう。」

なけなしの服を並べて栢木は唸り声を上げていた。

「朝食のあと出掛ける。」

そう告げられたのはついさっきの出来事。

いや、あれやこれや悩んでいる間に随分と時間が経ってしまったかもしれない。

とにかく初めて予定を教えてもらった喜びで栢木は半分パニックの様なものを起こしていた。

今日は何を着ようか。

似たり寄ったりなスーツを並べて踏ん切りのつかない気持ちと戦っている。

どこに行くのか、何をしに行くのかも聞いていないから悩みようがないのだが迷ってしまう女心が気持ちを上げてしまうのだ。

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