陽だまりの林檎姫
でも今の栢木は北都がこれまでの人を受け入れられなかった理由を知っているのだ。

自分は時の運が味方してくれたということも分かっている。

「君たちは今までで一番いい関係を築けていると思う。栢木、これからも北都の事を頼むよ。」

君が可能なかぎり仕えてやってほしい、千秋の北都を思う気持ちに栢木は微笑んだ。

きっと見せかけではないその気持ちを栢木は信じたい。

「はい、勿論です。」

それは元より自分の中にあった気持ち、栢木から離れる気は一切なかった。

それが表情に出ていたのだろう、栢木の思いを確信した千秋は微笑み、今までよりも潜めた声で話し始めた。

「あの子は多分気付いている。そして一生、口にしないかもしれないが…僕と北都の間には確かな絆があるんだよ。」

とても大切に、愛しそうに口にした絆という言葉。栢木は自然と繰り返すように呟いていた。

「僕たちは血の繋がった本当の親子なんだ。」

息を飲んだ栢木の目が見開く。

どういう事だろう。

確か北都は施設にいた幼少の時に千秋の養子になったと聞いている。

そういえば北都自身から母親の話は聞いたが父親のことは口にしていなかった。

つまりはそういうことなのだろうか。

混乱が邪魔をして話が頭の中で繋がらず、次の解説を表情で求めた。

「妻と結婚する前に付き合っていた、恋人との子なんだ。」

ということは、そういうことかと栢木は理解した。

理解したと同時にいくつも疑問が浮かんでくる。

しかし答えを求めようとして泳いでいた視線を千秋に向けても声にすることが出来なかった。

秘密だと、哀しくも優しそうに微笑む目がそう言っている。

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