陽だまりの林檎姫
「これがお前の…本当の姿なんだな。」

「…えっ?」

そう呟いたかと思うと、北都は言葉を噛み締めるように考え込む表情になっていく。

目は少しずつ伏せ目がちになり、北都の手も栢木から離れていった。

意味深な言葉を落とした北都に栢木は戸惑ってしまう、いや、戸惑いよりも不安の方が勝っているかもしれない。

それ程に儚い存在に思えて仕方なかった。

「やっぱり駄目だな。」

悔しそうにしても淋しさを帯びた瞳は誤魔化せない。言葉もどこか力がなかった。

いつもの北都なら、きっとそんな台詞は言わないだろうに。

「どうか…したんですか?」

さすがに不安を隠しきれず声にだした。

「何が?」

「いや、何か…。」

踏み込んでしまった手前、進むしかないのだが歯切れが悪くなって尻すぼみしてしまう。

確かめたいが、何を確かめたいのかも分からなくなって目が泳いでしまった。

北都に促されても言葉が出てこない。

「思えば不思議な気分だな。こんな所にこんな格好で栢木と並んでいるのも変な感じがする。」

手すりに両手をつくと、改めて光溢れる室内を見つめて北都が呟いた。

その気持ちは栢木も同感だ。

「そうですね。」

何故だか可笑しくなって笑いながら栢木も答えた。

実家にいた頃に行った夜会でもこうしてバルコニーに逃げたこともある。

その時見た景色と今見ている景色ではやはり違いは明白だと思った。

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