陽だまりの林檎姫
3.この名前を連れていく
とても幸せな夢を見た。
何かはよく覚えていないけど、凄くふわふわとした優しい夢だった気がする。
淡い光が集い、栢木の体も心も軽くなって、ただ幸せに満ちた世界に浮かんでいるようだった。
何故か聞こえてくる馬の蹄の音、しばらくして自分が馬車に乗っている事に気付いた。
ああ、そうか。馬車の心地よさに負けて寝てしまったのだ。
起きて仕事をしなくては。
まだぼんやりとした意識の中で起き上がろうと体を動かし始める。しかしそれは優しい手によって制止された。
「いいから、寝てろ。」
栢木の好きな匂いが鼻をかすめる。温かい手がそっと撫でるように頭に置かれた。
極上の優しさに触れた気がして幸福感に満たされていく。
目を開かなくても傍に誰が居るのかが分かる、その事実が心をくすぶらせて高まらせた。
「はい。」
素直な気持ちが声になって出てくる。
頭は完全には眠っていないが、体はもう動かない。
それでも顔は自然と微笑んでいたようだ。意外な栢木の返事に笑う北都の声が聞こえてきた。
あやすように優しく頭を撫でる感触が心地いい。
「やっぱりボディガード失格だな。」
優しい声が栢木に投げられた。
そうですねと言いたいのにもう口元でさえも動かない。体とのアンバランスにもどかしくなってきた。
やはり今日の北都はいつもと違う。
まるでどこかに行ってしまうような不安にも駆られる位、すべてが丁寧に感じる。
これが最後の別れだからと惜しむように思えて仕方ない。
何かはよく覚えていないけど、凄くふわふわとした優しい夢だった気がする。
淡い光が集い、栢木の体も心も軽くなって、ただ幸せに満ちた世界に浮かんでいるようだった。
何故か聞こえてくる馬の蹄の音、しばらくして自分が馬車に乗っている事に気付いた。
ああ、そうか。馬車の心地よさに負けて寝てしまったのだ。
起きて仕事をしなくては。
まだぼんやりとした意識の中で起き上がろうと体を動かし始める。しかしそれは優しい手によって制止された。
「いいから、寝てろ。」
栢木の好きな匂いが鼻をかすめる。温かい手がそっと撫でるように頭に置かれた。
極上の優しさに触れた気がして幸福感に満たされていく。
目を開かなくても傍に誰が居るのかが分かる、その事実が心をくすぶらせて高まらせた。
「はい。」
素直な気持ちが声になって出てくる。
頭は完全には眠っていないが、体はもう動かない。
それでも顔は自然と微笑んでいたようだ。意外な栢木の返事に笑う北都の声が聞こえてきた。
あやすように優しく頭を撫でる感触が心地いい。
「やっぱりボディガード失格だな。」
優しい声が栢木に投げられた。
そうですねと言いたいのにもう口元でさえも動かない。体とのアンバランスにもどかしくなってきた。
やはり今日の北都はいつもと違う。
まるでどこかに行ってしまうような不安にも駆られる位、すべてが丁寧に感じる。
これが最後の別れだからと惜しむように思えて仕方ない。