陽だまりの林檎姫
千秋の母親も亡くなってしまった頃、千秋の下に耳を疑うような知らせが入ってきた。

ラズレリアが見つかったというのだ。

どうしても諦めがつかなかった千秋は結婚しても尚、ラズレリアの行方を捜し続けていたらしい。

居ても立っても居られなくなった千秋は知らせを聞くなりすぐにその場所へと向かいラズレリアとの再会を試みたのだが。

「既にラズレリアさんは亡くなっていたの。そしてそこで初めて千秋様はラズレリアさんに子供がいることを知らされた。最初は結婚をしたのかと肩を落とされたようだけど…その子の年齢を聞いて1つの疑問を抱いたのよ。」

子供は6歳になるという。

ラズレリアと最後に会ったのは7年前、もしかしてという気持ちが千秋の心を突き動かし子供の居場所を突き止めた。

施設にいるという子供を見に行って千秋は言葉を失ったのだ。

ラズレリアにも、そしてどこか自分にも似た子供がいることに目の前が真っ暗になったという。

千秋は家に帰るなり奥方に引き取りたい子供がいるという話を打ち明けた、勿論不思議に思う奥方には本当のことを告げるしかない。

血液型が自分と同じだということ、子供の生まれた時期を考えてもその子が自分の子供であると信じて疑わなかった。

奥方としては自分に子供が授からない焦りもあって受け入れられる訳もない。夫婦の言い合いが続き、強い執着を見せる千秋に奥方が折れた形で子供は養子に迎えられた。

それが北都だ。

ラズレリアの教育があってのものか北都の知能指数は高く、相麻家として養子に貰い受けるにも大義名分が出来た。

しかし北都本人も最初は養子縁組の話を断ったという。

「何かを感じたのか、北都様は千秋様が何度訪れても首を縦に振らなかったの。しかし熱心に通う千秋様にとうとう折れてね…14年間の縛りを付けた契約という形で2人は養子縁組を結んだのよ。」

「契約。」

「知らなかったとはいえ北都様を父親がいない子供にしてしまった7年間、その倍の時間をかけて償っていくのだと千秋様は仰っていたわ。」
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