陽だまりの林檎姫
「学位も称号も何もない自分だが、もしアンナが自分を追いかけてきてくれた時はアンナとその先の人生を共にしてもいいだろうかという申し出だった。」
「え?」
「もしくは自分の中の準備が整ったら、お前を迎えに来てもいいかとな。」
拳を作った手を膝の上に乗せて北都は頭を下げる。
その光景が今でも鮮明に思い出されてタオットはゆっくりと目を閉じた。北都はどこまでも真摯に向き合ってきたのだ。
「彼は独学であの薬を開発したんだってね。大学に言った訳ではないから学位も無く、しかも私生児であると自らの生い立ちを話してくれたよ。彼が今抱えている後遺症の話もしてくれた。」
全てを隠さずに話して、それでも了承を願いたいという気持ちはよく感じたのだとタオットは続けた。
タクミからある程度の事は聞いていたが、本人から直接聞くと同じ話でもまた印象は変わりその通ってきた道の困難さに目を細める。
しかし淡々と話しタオットからの問いにも普通の出来事の様に答える北都にタオットはその考えを改めた。
「アンナは彼の人生をどう感じている?」
「え?」
「彼とこれからの人生を共に歩むというのなら、お前は彼の過去を重く捉えすぎてはいけない。」
タオットの言葉を上手く受け止められず栢木は表情で疑問を訴える。
「彼が生きてきた道は私たちからすれば困難の多いものだと見えるだろう。しかし彼にとってそれは当然に近い出来事なんだ。ただ自分に降りかかった問題に立ち向かって乗り越えただけに過ぎない。彼にしてみればキリュウから逃げる為に国の端から端まで移動したお前の方が大変な人生だと思うだろうな。」
声を上げて楽しそうに笑うタオットに栢木は恥ずかしくなって首を竦めた。
それは夕食の時に言われたのだ、何も国の端から端まで逃げることは無かったのではないかと。やることが極端すぎてタクミも呆れていたというからかいにあったのだ。
自分のした行いに指摘を受ければ確かにと認める部分もある。
今になって思えば必死だったとはいえよく20日以上もかけて遠くの地に逃げたなと首を傾げる程だ。
しかしタオットの言う事もよく分かった。
「え?」
「もしくは自分の中の準備が整ったら、お前を迎えに来てもいいかとな。」
拳を作った手を膝の上に乗せて北都は頭を下げる。
その光景が今でも鮮明に思い出されてタオットはゆっくりと目を閉じた。北都はどこまでも真摯に向き合ってきたのだ。
「彼は独学であの薬を開発したんだってね。大学に言った訳ではないから学位も無く、しかも私生児であると自らの生い立ちを話してくれたよ。彼が今抱えている後遺症の話もしてくれた。」
全てを隠さずに話して、それでも了承を願いたいという気持ちはよく感じたのだとタオットは続けた。
タクミからある程度の事は聞いていたが、本人から直接聞くと同じ話でもまた印象は変わりその通ってきた道の困難さに目を細める。
しかし淡々と話しタオットからの問いにも普通の出来事の様に答える北都にタオットはその考えを改めた。
「アンナは彼の人生をどう感じている?」
「え?」
「彼とこれからの人生を共に歩むというのなら、お前は彼の過去を重く捉えすぎてはいけない。」
タオットの言葉を上手く受け止められず栢木は表情で疑問を訴える。
「彼が生きてきた道は私たちからすれば困難の多いものだと見えるだろう。しかし彼にとってそれは当然に近い出来事なんだ。ただ自分に降りかかった問題に立ち向かって乗り越えただけに過ぎない。彼にしてみればキリュウから逃げる為に国の端から端まで移動したお前の方が大変な人生だと思うだろうな。」
声を上げて楽しそうに笑うタオットに栢木は恥ずかしくなって首を竦めた。
それは夕食の時に言われたのだ、何も国の端から端まで逃げることは無かったのではないかと。やることが極端すぎてタクミも呆れていたというからかいにあったのだ。
自分のした行いに指摘を受ければ確かにと認める部分もある。
今になって思えば必死だったとはいえよく20日以上もかけて遠くの地に逃げたなと首を傾げる程だ。
しかしタオットの言う事もよく分かった。