陽だまりの林檎姫
この2人、雇用の関係にあって、栢木は北都の身辺警護を任務としたボディーガードなのだ。
とはいえ、決して体の作りがしっかりしている訳ではなく寧ろ少し細身なようにも見える。
どちらかといえば秘書と言われた方が周りも納得しやすいだろうが、ともかく栢木は主人に対して怒っていた。
大きな声で言えないが、彼には難がある。
そんな栢木の心境を気にする事もなく、まるで煽るように北都は面倒くさそうな溜め息をついた。
「…っため息!?」
憤慨する栢木の声も態度もまるで景色の一部だと北都の意識は軽やかに素通りする。
頬杖をついておまけのため息を吐けば、北都は目を細めて胸の内で悪態を吐いた。
せっかく出向いた講演会も思い出すだけでため息が出るほどに期待外れな内容、思えばそこが始まりだ。
最後の最後にどんでん返しの何かがあるのかと粘ってみたがそれも無し、何の為にここまで足を運んだのか全く時間の無駄だと思わせる話に苛立ちが募った。
乱れる気持ちを落ち着かせるためと入ったこのカフェでは薬品のような珈琲を出される始末、全てが嫌がらせかと思う程度の低さに不機嫌となり現在に至っている。
そこに栢木が現れて見事にタイミングが悪かったという事なのだが、もちろん栢木には関係ない話で。
「ちょっと、北都さん。聞いてます!?」
態度が悪いだけで大した反応も返ってこない北都に苛立ち、栢木は理性の範囲内で絞りながらも思わず声を荒立てた。
パンツスーツを着こなした栢木と、既にゆるめている部分はあるが同じくスーツを身にまとった北都が向かい合って座っている。
しかし話の内容はビジネスなどではない。
とはいえ、決して体の作りがしっかりしている訳ではなく寧ろ少し細身なようにも見える。
どちらかといえば秘書と言われた方が周りも納得しやすいだろうが、ともかく栢木は主人に対して怒っていた。
大きな声で言えないが、彼には難がある。
そんな栢木の心境を気にする事もなく、まるで煽るように北都は面倒くさそうな溜め息をついた。
「…っため息!?」
憤慨する栢木の声も態度もまるで景色の一部だと北都の意識は軽やかに素通りする。
頬杖をついておまけのため息を吐けば、北都は目を細めて胸の内で悪態を吐いた。
せっかく出向いた講演会も思い出すだけでため息が出るほどに期待外れな内容、思えばそこが始まりだ。
最後の最後にどんでん返しの何かがあるのかと粘ってみたがそれも無し、何の為にここまで足を運んだのか全く時間の無駄だと思わせる話に苛立ちが募った。
乱れる気持ちを落ち着かせるためと入ったこのカフェでは薬品のような珈琲を出される始末、全てが嫌がらせかと思う程度の低さに不機嫌となり現在に至っている。
そこに栢木が現れて見事にタイミングが悪かったという事なのだが、もちろん栢木には関係ない話で。
「ちょっと、北都さん。聞いてます!?」
態度が悪いだけで大した反応も返ってこない北都に苛立ち、栢木は理性の範囲内で絞りながらも思わず声を荒立てた。
パンツスーツを着こなした栢木と、既にゆるめている部分はあるが同じくスーツを身にまとった北都が向かい合って座っている。
しかし話の内容はビジネスなどではない。