陽だまりの林檎姫
それは栢木と出会った後も暫く続いていたと北都は苦笑いをした。
「でも栢木と触れ合う中でお前のハチャメチャな行動力と芯の強さに当てられて…少しずつ考えが変わっていった。お前から逃げる為に研究だと偽って本を読みこめば、意外にもその本が面白かったりだとか…俺の中で色々な経験があったんだよな。」
「…何ですか、それ。」
「いつの間にか情がわいて、お前に触れて、このままじゃ駄目だって思うようになった。」
北都と栢木、2人の中で浮かんだ記憶はきっと同じものだろう。
今まで何度こうして見つめ合ったか分からない、体が火照る感覚は今もあの時も少しも変わらなかった。
「よく分からない執念で出来た薬は多くの人を救うことが出来た。でもその過程でぶつかった疑問を振り払えていない。薬草自体に何らかの法則があるのだとしたらそれを見付けたいとそう思ったんだ。だから植物学を深めようと、そこに向き合うことを決めた。」
自分を救いたくて作り始めた薬ではない。誰かを救いたかった訳でも無い。
どうせ死んでしまうのならこの体を使って薬を作ってみよう、それはちょっとした好奇心と探求心からの始まりだった。
「何かを見付けることで誰かの命を救えたら。栢木と関わって周りが見えたおかげでその感覚が俺の中に生まれたんだ。」
それこそ北都の中では画期的な出来事だったのだ。
北都は薬草の上部にあるガラス板を指して栢木の視線をそこへ促した。
「栢木が言っていたプリズムから思いついた形だ。太陽光を直接と反射光に分けて利用する方法、ランプの灯りでも出来るか研究を進めている。今は太陽と火の力しか熱を与えることが出来ないが、もしかすればそれ以外の方法も生まれるかもしれない。」
声に張りが出て活き活きと語る北都はまるで夢を語る少年の様だ。
いつしか栢木は薬草よりも北都の姿だけを見つめてその姿に胸を熱くした。
「薬効が高い植物を作れたら植物の育ちにくい地域でも薬に困ることは無い筈だ。植物の可能性を見付けだす、やっと俺にもやりたいことが見つかった。お前のおかげだよ、栢木。」
幸せそうに微笑む北都に栢木は首を横に振ることしか出来ない。
もう心は満たされて涙が堪え切れそうになかった。
いつも寂しげな目をしていた北都はもういない、自分の進むべき道を見付けまっすぐに向かって行く輝いた姿に言葉もなかった。
「でも栢木と触れ合う中でお前のハチャメチャな行動力と芯の強さに当てられて…少しずつ考えが変わっていった。お前から逃げる為に研究だと偽って本を読みこめば、意外にもその本が面白かったりだとか…俺の中で色々な経験があったんだよな。」
「…何ですか、それ。」
「いつの間にか情がわいて、お前に触れて、このままじゃ駄目だって思うようになった。」
北都と栢木、2人の中で浮かんだ記憶はきっと同じものだろう。
今まで何度こうして見つめ合ったか分からない、体が火照る感覚は今もあの時も少しも変わらなかった。
「よく分からない執念で出来た薬は多くの人を救うことが出来た。でもその過程でぶつかった疑問を振り払えていない。薬草自体に何らかの法則があるのだとしたらそれを見付けたいとそう思ったんだ。だから植物学を深めようと、そこに向き合うことを決めた。」
自分を救いたくて作り始めた薬ではない。誰かを救いたかった訳でも無い。
どうせ死んでしまうのならこの体を使って薬を作ってみよう、それはちょっとした好奇心と探求心からの始まりだった。
「何かを見付けることで誰かの命を救えたら。栢木と関わって周りが見えたおかげでその感覚が俺の中に生まれたんだ。」
それこそ北都の中では画期的な出来事だったのだ。
北都は薬草の上部にあるガラス板を指して栢木の視線をそこへ促した。
「栢木が言っていたプリズムから思いついた形だ。太陽光を直接と反射光に分けて利用する方法、ランプの灯りでも出来るか研究を進めている。今は太陽と火の力しか熱を与えることが出来ないが、もしかすればそれ以外の方法も生まれるかもしれない。」
声に張りが出て活き活きと語る北都はまるで夢を語る少年の様だ。
いつしか栢木は薬草よりも北都の姿だけを見つめてその姿に胸を熱くした。
「薬効が高い植物を作れたら植物の育ちにくい地域でも薬に困ることは無い筈だ。植物の可能性を見付けだす、やっと俺にもやりたいことが見つかった。お前のおかげだよ、栢木。」
幸せそうに微笑む北都に栢木は首を横に振ることしか出来ない。
もう心は満たされて涙が堪え切れそうになかった。
いつも寂しげな目をしていた北都はもういない、自分の進むべき道を見付けまっすぐに向かって行く輝いた姿に言葉もなかった。