陽だまりの林檎姫
「なに?」

あまりにも不自然な流れに栢木はもう一度尋ねる。

言いにくいことなのだろうか、互いに顔を合わせながら誰が言い出すかを見計らっているようだ。

気持ちの悪い変な待ち時間に栢木の目が細くなる。

一体何があったというのだろうか。

「…いや、ね?北都様がまだ戻られてないから…。」

「北都さんが?」

「少し遅すぎやしないかと皆で心配していたところだったのよ。」

「前にもあったから、別に今回が初めてではないんだけどね。」

どうかしたのかと騒ぎになっていたと仲間たちは続けて口にした。

確かに、こんなに外が暗くなっても戻らないのは何かあったからじゃないかと心配しても仕方ない。

周りの様子を見るかぎり、栢木の事を気遣って口をつむんだことは簡単に想像できた。

「…まさか。」

それと同時に表れる淡い期待、もしかしたらと浮かんでしまった気持ちがある。

もう自分で勝手に期待して動くのは止めようと思っていたのに、それでも馬鹿みたいに次こそはと考える自分に気づいてしまった。

葛藤なんて、あってないようなものだ。

「…探しに行ってくる。」

栢木の言葉にざわめきが起こる。

「栢木?」

「すぐに出るから、馬車を用意してくれる?」

「でも…。」

「大丈夫よ、これは私の仕事でしょ?」

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