陽だまりの林檎姫
「いいえ。今日は部屋で休んでいます。」

少し申し訳なさそうに答えるマリーの声は三浦の関心を強く引くことになる。

確かここ最近の栢木はいつもの様に穏やかに微笑むが、どうも表情が優れていなかったのを覚えていたのだ。

表情どころか、言葉も様子もいつものような明るさや元気さがなかった。

「やはり…そうでしたか…。」

三浦の表情が曇っていく。

「今日も顔色が悪いんですか？」

心配になってマリーに問いかけたが、予想に反してマリーから微かな笑い声が聞こえてきた。

「いえ、今日はまだ誰も栢木の顔を見てはいないんです。」

「では昨日から？」

「ふふ、いいえ。」

そう言いながら辿り着いた応接間の扉をゆっくりと開く。

マリーの目は楽しそうに輝いていた、そして不思議そうに視線で問いかける三浦に答えを渡すことにしたのだ。

「今日は栢木のお休みなんです。」

「お休み、ですか…。」

ふふふ、と嬉しそうに笑いながら首を横に振った。

「それは建前で。北都様から自分で起きてくるまではそっとしておくようにと言われているんです。」

秘密ですよと囁きながら伝えられた言葉に三浦は目を大きく開く。

「北都さんが？」

信じがたい話に素早く反応を示し食い付いた。

「昨夜面白いことが起きたんですよ？面白いと言ってしまっては怒られてしまいますけど…北都様に大きな変化があったようなんです。」

「変化ですか。」

「はい。きっと栢木のおかげですね。」

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