陽だまりの林檎姫
「三浦さん?」

彼に珍しく少し俯いた姿に栢木は目を奪われる、そして思わず足を止めて声をかけてしまった。

「お体の具合でも…?」

「え?ああ…いいえ。少し考え事を。」

心配する栢木の気持ちが分からず聞き返してしまったが、自分が俯き加減であったということに気付いて三浦は穏やかに笑い首を横に振る。

未だ納得が出来ない栢木を見つめ、小さく頷いた。

「北都さんはやはり、栢木さんを大切にされているらしい。」

「はい?」

言葉の意味が分からない栢木は疑問符を浮かべて次に続くであろう言葉を待つ。

「栢木さんを休ませてあげるように、そうマリーさんに指示をしたようですよ。」

「そ…うなんですか?」

栢木の目が大きく開き、どこか抜けた表情は今まで見せたことが無い素顔の栢木で三浦は見惚れてしまいそうになる。

自分の前では常に作られた余所行きの姿しか見せてくれないのに北都の前ではいつもこうなのだろうか、そう考えると何だか可笑しくなった。

「実は私、仕事でミスをしてしまいまして…落ち込んでいたんですよ。」

突然の告白に栢木は瞬きを重ねて三浦を見つめた。

「社長に多大な迷惑をかけてしまいました…気持ちを切り替えないといけないんですが、なかなか上手くいかなくて。」

「三浦さんにも…そんな事があるんですか?」

栢木の質問に三浦は笑いながら勿論だと答えた。

「私は弱く脆い人間ですよ。見かけ倒しなんです。」

そんな言葉を聞かされても、今までの完璧な印象が強すぎてなかなか消化できそうにない。

しかし彼自身が言う様に人間であれば誰でも脆い部分はある筈だ。

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