陽だまりの林檎姫
そしてまた日常が訪れた。
「本社にですか?」
いつものように朝食を終え、珈琲を口にする北都に栢木は尋ねる。
「俺宛の封書がある。」
目を合わせる事無く交わされる会話は相変わらずだった。
「急ぎの物ですか?」
「必要なものだ。」
どこかで聞いたような会話だなと栢木は振り返る。
そして栢木の記憶をなぞるように必要だと告げて北都はそれ以上続けようとはしなかった。
「…分かりました。」
有無を言わせない遣いを受け入れ、栢木は先に部屋を出ていく。
そのまま屋敷を出ていったのだろう、そう結論を出すと北都は出掛ける準備を始めた。
素早く着替えて玄関に待たせてある馬車に向かう毎度の行動に、前回の事もあった分マリー達はいつも以上に慌て戸惑っていた。
「あの、栢木は…。」
「遣いに出した。」
遠慮がちだが一応の制止を試みる声を真っ二つに切り裂いて前へ進む。
扉が開いた馬車に乗り込もうと玄関を出たその時だった。
「どちらにお出かけです?北都さん。」
聞き覚えのある声に動きが止まる。
視線を向ければ玄関の扉の陰に隠れるように立っていた栢木は真っすぐに北都を捕らえていた。
「…遣いはどうした?」
一瞬動きが止まったのは驚いた証拠、表情は変わらなくても不意をつけた実感に栢木は微笑んだ。
「本社にですか?」
いつものように朝食を終え、珈琲を口にする北都に栢木は尋ねる。
「俺宛の封書がある。」
目を合わせる事無く交わされる会話は相変わらずだった。
「急ぎの物ですか?」
「必要なものだ。」
どこかで聞いたような会話だなと栢木は振り返る。
そして栢木の記憶をなぞるように必要だと告げて北都はそれ以上続けようとはしなかった。
「…分かりました。」
有無を言わせない遣いを受け入れ、栢木は先に部屋を出ていく。
そのまま屋敷を出ていったのだろう、そう結論を出すと北都は出掛ける準備を始めた。
素早く着替えて玄関に待たせてある馬車に向かう毎度の行動に、前回の事もあった分マリー達はいつも以上に慌て戸惑っていた。
「あの、栢木は…。」
「遣いに出した。」
遠慮がちだが一応の制止を試みる声を真っ二つに切り裂いて前へ進む。
扉が開いた馬車に乗り込もうと玄関を出たその時だった。
「どちらにお出かけです?北都さん。」
聞き覚えのある声に動きが止まる。
視線を向ければ玄関の扉の陰に隠れるように立っていた栢木は真っすぐに北都を捕らえていた。
「…遣いはどうした?」
一瞬動きが止まったのは驚いた証拠、表情は変わらなくても不意をつけた実感に栢木は微笑んだ。