[完]愛を君と
結局タクシーでも、その日蒼生が傷のことを問うことは無かった。
「ただいまー」
もちろんそれに返事が返ってくることは無い。
シンと静まり返った家には、コツンコツンと松葉杖の音が響いた
あ、なんか家の中では松葉杖使ってもいいって言ってくれたから。
プルルルル______
ふと、家の固定電話が鳴った。実はまだ解約できてなかったから、そのままなんだよね
ガチャ_______「もしもし、田浦です」
「…美愛……?」
声の主は、奏空……だった
「奏空?どうしたの?家に電話なんて珍しいね」
「……うん」
ひとつひとつ間があって、何だか元気がなくて少し違和感を覚えた。