イジワル上司に甘く捕獲されました
「……俺達が自分から付き合っていることを公言する必要はないだろうけど。
まあ、俺としては公言したいけど。
バレたらその時はその時でいいだろ?
俺は美羽と隠れて付き合いたくないし」

……彼がこういう言い方をする理由はわかる。

瀬尾さんがもの凄くモテることはさておき。

同じ店内でつき合っているというのはタブーというのが我社の暗黙のルールだ。

根拠のないルールではなくて。

金融機関として、一人ではできない不正も二人ならば可能だと見なされるからだ。

つまり、付き合っていると、二人で目論んで悪いことができるという意味でどちらかが転勤になる可能性が高いのだ。

その為、店内で付き合っている場合は必死で皆、隠す。

もしくは見て見ぬふりをする。

外で手を繋がないカップルもいると言われているくらいだ。

「……はい」

頷く私を。

ギュッと抱きしめてくれる瀬尾さん。

瀬尾さんの、今では慣れてしまった香りに包まれる。

それから。

部屋に帰ろうとする私を。

泊まっていけばいいのに、と拗ねたように言う瀬尾さんに何度も断って。

どうせ同じ場所に出勤するんだからとごねる瀬尾さんを無視して。

何とか腕から脱け出して部屋に帰ったのだ。




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