イジワル上司に甘く捕獲されました
ただ、瀬尾さんに無理をさせてしまっていないのか、たまたま同じマンションだったから毎日会うはめになっているんじゃないかと最初は不安だったけれど。

そんなところも見透かしている仕事ができる彼氏は、美羽と一緒に過ごせない方がツライと言い切ってくれた。

「……眼鏡がないほうがキスしやすいな」

呟く瀬尾さんは自宅でかけてきた眼鏡を外して、私にまた顔を近付ける。

「せ、瀬尾さんっっ」

思わず逃げようとする私の腰をガッシリ両腕で掴む。

「瀬尾さん?」

目を細めて私を見る彼は、してやったり、という表情。

……そう。

二人でいるときの敬語は直ってきたけれど、瀬尾さんを名前で呼ぶことがまだ上手くない私は焦ると瀬尾さん、と呼んでしまう。

そのことが彼は不服らしく。

いつも意地悪をされる。

……こんな風に。

「はい、美羽。
ちゃんと俺の名前呼んで?
呼ばなきゃずっとキスするよ?」

私の顎に長い指を添えてニッコリと微笑む姿はまるで王子様だけれど。

私には恥ずかしくてたまらない。

「じ、じゅん、さん……」

言った後。

「良くできました」

そう言って彼は私の唇を啄むようなキスをする。

それはすぐに熱を帯びて。

唇の隙間から入りこんできた舌が私の舌を捕らえて。

角度を変えて。

何度も何度も繰り返されて。

長いキスに変わる。


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