イジワル上司に甘く捕獲されました
長いキスを終えて。

夕飯を食べている時に。

「もう十二月か、早いな」

と潤さんが呟いた。

今日の夕食は潤さんのリクエストで親子丼とお味噌汁、ナス味噌炒めだ。

潤さんはいつも私と一緒に配膳をしてくれて、私と一緒に席に着いてから箸を持つ。

然り気無い仕草だけど、そこに潤さんの何気ない優しさがあって、私はとても嬉しくなる。

熱いお茶が好きな私と違って猫舌な潤さんは少しぬるめのお茶が好きで。

それもこれも、こんな風に一緒に過ごせるようになって知ったこと。

「今日も美味いね、ありがとう、美羽」

箸をとめて、ニッコリと私に微笑む潤さん。

相変わらず、とてもキレイな所作で食事をする人だ。

ドキン、と胸が高鳴る。

「ど、どういたしまして……」

不意打ちの笑顔にはやっぱりまだ慣れない。

「美羽、顔赤いよ?」

苦笑する潤さんは。

向かい側からすっと右手を伸ばす。

私の耳元に手がかかって。

えっ、と思った瞬間に。

チュッと音をたてて、キスをする潤さん。

「ヤッパリ足りなかったな、ただいまのキス」

私の視界いっぱいに広がる綺麗な顔立ち。

「……な、なっ」

カアアッと更に真っ赤になって、口をパクパクさせる私にはお構いなしで。

「美羽がそんな可愛い表情するからだよ」

と、至極当たり前のことのように言ってまた食事を続ける。

……私は既に食事どころではなくなってしまっていた。



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