イジワル上司に甘く捕獲されました
私にとって波乱な食事の後片付けをしていると。

食卓を拭き終えた潤さんが私の真後ろに立った。

背伸びをしながら戸棚に食器を片付ける私の手から食器を受け取って片付けてくれながら。

背後からフワッと包み込むように私を抱きしめた。

身体中に広がる潤さんの香りにとてもドキドキするけれど、とても安心して。

お腹に置かれた潤さんの両手に自分の手を重ねる。

私の肩に頭をもたせかけて。

さらっと潤さんの髪が私の頬をくすぐる。

「……美羽、もうすぐ半年だな。
美羽が札幌支店に来て」

ポツリと呟いた。

「あ、うん……」

そっか、もうそんなに経つんだ……十二月だもんね、もうしばらくしたら真央も帰ってくるし……と、呑気に思う私。

「……美羽が戻らなきゃいけない期限が迫ってきているんだな……」

潤さんの言葉にハッとする。

そう、私は元々札幌支店に着任しているわけではなくて、プロジェクト期間だけの着任だ。

「まさか、私、来年戻らなきゃいけないの……?」

取り乱しそうになりながら恐る恐る尋ねると。

「……いや、まだそんな動きはないし。
何よりプロジェクト自体がまだ落ち着いていないから。
本部にはそう報告されているって尚樹が言ってたよ。
だけど……」

そこで潤さんは口をつぐむ。

不安にかられた私は身体を捻って、潤さんと向き合った。
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