イジワル上司に甘く捕獲されました
「ごめん、美羽。
悲しませたくて、心配させたくて言ったわけじゃないんだ。
ただ……いずれはそうなることを言いたかったんだ。
できるなら……俺も今みたいにずっとこうして同じ店で美羽といたいんだ」

長い睫毛を震わせながら話す潤さんに、私の胸が痛くなる。

……わかっている。

本当に潤さんが私を大事に思ってくれていること。

一緒にいたいと願ってくれていること。

一見、無愛想で冷淡な物言いにも聞こえるけれど。

潤さんは付き合う前から、部下の私をずっと気にかけてくれていた。

ううん。

潤さんは皆に対してそうだ。

一人一人をきちんと見ている。

潤さんをあまり知らない人が見たら、潤さんは素っ気ない人に見えるかもしれないけれど。

フォローが必要な場合はきちんとフォローするし、任せる時はきちんと任せる。

仕事に対して、お客様に対して、とても真摯に向き合う人だからこそお客様からの信頼も厚い。

ズバ抜けて素敵なのは外見だけではなく、その内面もだ。

そんな素敵な人が私を好きだと大事だと言ってくれていて。

それだけでも信じられなくて嬉しい反面、どうして私なんだろうって自問自答している自分がいる。

……自信がないのだ。

離れ離れになってしまったら。

潤さんが私を忘れてしまいそうで。

私を好きではなくなってしまいそうで。

私よりも素敵な誰かにとられてしまいそうで。

不安になる。
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