イジワル上司に甘く捕獲されました
そう、確かに急に言われて驚いてショックだった。

呆然ともした。

そんな簡単にアッサリ勝手に終わらせないで、と腹もたった。

だけど。

……泣いてすがったり、戻りたいとは思わなかった。

そう。

札幌勤務の話が出ていたかもしれない。

そっちに意識が向いていたからかもしれない。

でも。

それはただの言い訳で。

私のなかで。

恐らく彼氏として好きという場所から拓斗が出てしまっていたのだろう。

……妹に指摘されて気付くなんて。

やっぱり私はまだまだだなあと自嘲気味に一人で笑う。

「何、どうしたの?」

「……ううん、真央はすごいなあって。
私より私のことよくわかっているなあって思ったの。
……確かに私、拓斗との別れをアッサリ受け入れちゃってるもん」

「でしょ?
だって、私がもし翔と別れたら……そんなこと想像するだけでパニックになるよ。
毎日は無理でも出来るだけ会いたいし声だって聞きたい。
一緒にいるとドキドキして嬉しくて。
離れると寂しくて切なくて。
……好きってそういうものじゃない?
美羽ちゃん、最初は拓斗くんを好きだったのかもしれないけれど……今はもう違うんじゃないかな?」

いつになく真剣な優しい真央の声音に。

私はスマートフォンを片手に頷く。

「変な区切りかもしれないけれど。
拓斗くんと別れて、そのタイミングで言われたってこともひとつのご縁じゃない?
私はいい話だと思うし……前向きに考えてみたら?
パパとママには話した?」

「……ううん、まだ。
先に真央に相談したかったから」

「そっか、了解。
また何かあったら連絡してよ。
しばらく早番だから夜は早く帰れると思うから」

ありがとう、と言って通話を終えて。

札幌に行くことを悪くないと思っている自分がいた。
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