イジワル上司に甘く捕獲されました
既にバレているけれど、真っ赤な顔を隠すように俯きながらケーキを食べて。

ケーキの後片付けを引き受けてくれた潤さんに甘えて、ソファに座り込んだ私は一人呟く。

「……もう、絶対に女慣れしてる……」

何だか悔しくて。

甘い言葉も優しい仕草も、細やかな心遣いも嬉しいけれど。

それだけでも、物凄くドキドキするのに。

あんな整いすぎた外見で。

そんなことをされて、ドキドキは更に上乗せされる。

……私ばっかりがいつまでも慣れなくてドキドキしっ放しみたいだ。

……潤さんの前の彼女さんとかもこんな風に大事にしてもらってきたのかな……話を聞いたことはないけれど。

デリケートなことだし、聞かれたくないことだろうし。

何より私と付き合う前の話で、私が今更関係ないのにアレコレ言うのは違うだろうから……。

私も拓斗の話を潤さんにしたことはないし。

……ああ、もう。

折角のクリスマスに二人きりなのに、何でこんな暗いことばかり考えているんだろう。

……彼氏がモテすぎる人だからかなぁ……。

これが桔梗さんだったら、何も考えずサラッと聞けそうなんだけど。

というより、自分から言ってそう……。

前の彼女より、今の彼女の君が一番、とか……。

……言いそう。

と、自分の勝手な想像でニヤついていたら。

「……何、考えてんの?」

いつの間にか、後片付けを終えた潤さんが私の隣に座っていた。
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