イジワル上司に甘く捕獲されました
「え、あ……べ、別に……」

急に聞かれて疚しいことはないのに焦る私。

「ふうん?
絶対変な想像してたな」

「し、してませんっ。
き、桔梗さんの彼女はどんな人かなと思ってただけっ」

「は?
何で尚樹?」

思いっきりしかめっ面をする潤さん。

「いや、えっと……元々は、その……」

何て言っていいかわからず戸惑う私に。

潤さんは意地悪な光を瞳に宿らせながら私にジリジリ近付く。

「ふうん?
俺といるのに美羽は尚樹が気になるんだ?
……尚樹がカッコいいから?」

「ち、違うっ」

「じゃ、何で?」

……もう、何でこんなにしつこいの。

「も、元々は潤さんが女の子慣れしてるなあって思ったの。
私は潤さんの一挙一動にドキドキして焦ったりしているのに……潤さんはすごく余裕だし。
私が喜ぶことや嬉しいことを当たり前みたいに、さっとしてくれたり言ってくれて……でも、私はそんなのできないし。
……そんなこと考えていたら……潤さんは私よりも大人だし、つ、付き合ってきた人もきっと素敵な人だったんだろうなあとか……ど、どんな人だったんだろうとか……モヤモヤ考えちゃって……」

チラリと潤さんを俯きながら見ると、険しい表情で私を見つめ返すだけで。

私は溜め息をひとつ浅く吐いて。

「……でも以前に付き合っていた人の話は聞くべきじゃないなって。
潤さんとその人との思い出だろうし、私には関係ない話だから……わ、私も話してないし」

「……それで何で尚樹?」

「き、桔梗さんなら、軽く笑って聞けそうかなと……」

「え、それだけ?」

コクンと落ちこみながら頷くと。

トンッと潤さんが私の頭を自身の肩に乗せた。
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