イジワル上司に甘く捕獲されました
それから数日。

両親にも相談して。

自分でも何度も考えて。

私は札幌に行くことを、辞令を受けることを決めた。

片山部長にその旨を伝えると満面の笑みで喜んでくれた。

それからは。

着任に向けての札幌支店とのやり取りや現在の仕事の引継ぎ、引っ越し準備なので慌ただしい毎日を過ごした。

両親は私が家を出ることを心配していたけれど、真央との同居ということで少しは安心しているようだった。

佐知子叔母さんとは国際電話で話をした。

私が引っ越してくることを快く了承してくれた。

休暇が取れた時には帰国するから、会えることを楽しみにしているわ、と嬉しそうに言ってくれた。

拓斗のことは真央の指摘通り、振り返ることもなく忙しい毎日を送っていた。

私の着任日は七月と決まり、引継ぎも引っ越しの荷造りも無事に終わり、引っ越し日を来週に控えたある日。

そろそろ眠ろうかと時計に目を向けた時。

真央から電話がかかってきた。

「美羽ちゃんっ、聞いて!
私、海外研修、合格したの!」

「へっ?
海外研修?」

「そう、ホラ、入社した時に話したことあったでしょ?
会社の海外研修プログラム!
世界各国の百貨店にある支店で数ヶ月研修するのっ。
去年から応募と試験、面接があってね、先月最後の面接を受けたの。
そしたら、今日マネージャーに合格したよって言われて!」

「エーッ、すごいねっ真央!
良かったねっ。
真央、海外研修プログラム参加したいってずっと言ってたもんね……確かこの間は不合格だったんだよね……」

思わぬ報告に私は喜ぶ。

佐知子叔母さんに似たのか海外でも仕事をしてみたいと願っていた真央は入社以来、海外研修プログラムへの参加を熱望していた。

けれど、書類選考、課題提出の他にも試験、面接があり、毎年社内から多数の応募があるが、合格できるのは一握りだと真央から聞いていた。

かくいう真央も落選を経験している。

海外研修プログラム後は通常業務に戻るけれど、参加経験者として現在よりも業務内容が広がると言っていた。

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