イジワル上司に甘く捕獲されました
そんな小さな不安を抱えたまま、日々は過ぎて。

いつの間にかバレンタインデーが近づいていた。

バレンタインデー当日は、平日のせいもあるけれど、潤さんに夜、チョコレートとプレゼントだけでも渡したいと考えていた。

最近の潤さんは以前に言われていたように、仕事量が増えていて、毎日の帰宅時間が遅くなっていた。

本格的に仕事を峰岸さんに引き継いでいるのか、二人で取引先に向かう姿もよく見かけていた。

潤さんと峰岸さんが一緒にいる姿をよく見かけるようになり、更に同期ということが、遠慮のない距離感に見えて。

支店の皆は過去に二人が付き合っていたことを知らない筈だけれど。

二人の噂話を支店内ではよく聞くようになっていた。

一緒によくお昼を食べている、買い物をしていた、とか。

あくまでも仕事上の付き合いしかしてないよ、何それ、と潤さんは私に笑ってくれていたけれど、私の胸中はざわざわと波うっていて。

形の見えない影が心に少しずつ忍び寄ってきている、そんな思いを抱えていた。
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