イジワル上司に甘く捕獲されました
私は聞いた内容をメモに残しながら、桔梗さんの姿を探す。

あいにくお昼前で、渉外係のデスクは、人が殆どいない。

桔梗さんも見当たらず、ボードを確認すると、外出になっていて戻り時間は不明だった。

仕事用の潤さんと峰岸さんの携帯電話にかけてみたけれど、二人とも繋がらず。

ルール違反だけれど、潤さんのプライベートのスマートフォンにもかけてみたけれど繋がらなかった。

桔梗さんも同じだった。

どうしよう、と焦っていると内線で一階に大量の案内状が届いているから引き取りに来てほしいと連絡があった。

どうしようもなくとりあえず一階に行くと、なるほど、何百枚という案内状と封筒が積まれていた。

高井さんの話では明日、ということだったけれど早く届いたようだ。

台車を借りに行き、何とかプロジェクトチームのスペースに運び込んだ時、藤井さんが戻ってきた。

「橘さんっ、何、これっ?」

普段、仕事では冷静な藤井さんが大きな声をあげた。

私は藤井さんが戻ってくれて少しホッとして。

半ば狼狽えながらも、高井さんとの電話の内容を伝えた。

「……これ、手違いとかそういうレベルじゃないわよ。
だって制度開始日を印字しちゃってるから……ええと、少なくとも明日、明後日までには発送しなきゃよね?
でないと先方に失礼になってしまうし……今から訂正もできないし……。
……私達が一枚ずつこの束のミシン目を切って内容を確認して、宛名シールを貼り付けて、入れ間違えがないかダブルチェックしてから投函しなきゃってこと?」

「……ですよね……」

「……無理でしょ……まだ瀬尾さんも峰岸さんも電話は繋がらないの?」

「はい、桔梗さんも……」

藤井さんは腕時計を見て、しばらく考え込んで、何処かに電話をかけた。

「お世話になっております、藤井です。
いつもごめんなさい、今日は?
来店されてる?
良かった!
至急電話か帰社してくださいって伝えてください!」
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