イジワル上司に甘く捕獲されました
「えっ、瀬尾さんですか?」

「そう、瀬尾よ」

何か意味あり気にニッコリ笑う城田さん。

「本当、見てくれ完璧だからね、瀬尾。
社内からも社外からもモテモテだし。
最近まで関東の支店だったの、それから出身地の北海道の支店に異動したって話は聞いてたんだけど。
まさか、橘さんの指導担当になるとはね、世間は狭いわね」

「そうなんですか……」

北海道出身の人なんだ、瀬尾さん。

色々教えてもらえたらいいな……。

「まあ、困ったことがあったらいつでも連絡してきて。
頑張ってね!」

何やら楽しそうな表情で城田さんは私の肩をポンッと叩いて他の人達の元へと戻っていった。

私はまだお会いしたことはないけれど、城田さんの同期の人がいてくださるということに勇気づけられていた。


札幌に旅立つ日の朝。

荷物は輸送に時間がかかるということで先に出発した。

最後まで心配の色を隠さない両親に手を振って。

必要最低限の手荷物と共に、意気揚々と飛行機に乗り込んだ。

新千歳空港に着いてすぐ。

その気温差にビックリして。

空港施設に売られているお土産や看板を見て。

ああ、私、本当に札幌に来たんだなと実感した。

真央に新千歳空港に着いたことをメールして。

事前に教えてもらった、空港バスに乗り込んだ。

引っ越し会社さんはお昼過ぎに到着予定だから、充分に間に合う。

バスに揺られ、張りつめていた気持ちが少しゆるんで私はウトウトしていた。


「……アンタ」

頭上から降ってきた低い声。

私は夢見心地な状態で聞いていた。

「……終点だけど」

さらに続く声。










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