イジワル上司に甘く捕獲されました
私の返事に嬉しそうに破顔した潤さんは私をソファから立たせて。

再び胸の中にギュッと抱きしめた。

いつものように。

潤さんの温かい少し早めの鼓動が耳に響く。

私の鼓動もせわしなく動き出す。

「美羽の泣き顔……実は結構好きなんだ。
……どうしようもないくらい可愛くて。
でも悲しませたくなくて、何とかしたくなって、でも見たくて、さ」

矛盾してるな、と言いながら潤さんは私の額と頬にキスをする。

とけてしまいそうなくらいの甘い微笑みを私に向けて、ゆっくりと唇を近づける潤さんに。

瞼を震わせながら私も目を閉じる。

ふわっと優しく触れた唇は温かくて。

潤さんの存在が身体中に広がる。

ああ、私はこの人がこんなに好きなんだ、と身体の奥底で実感する。

一旦唇を離して、妖艶すぎる微笑みを私に向ける潤さん。

その瞳には熱いものが既に宿っていた。

再び重ねられた唇は熱くて。

「……っ……ふっ……」

息をするのも苦しいくらいに、私を丸ごと呑み込むようなキス。

吐き出した甘い自分の吐息に赤面する余裕もなく。

強引とも思えるような性急さで私の口腔に入り込んできた熱い潤さんの舌に翻弄される。

逃げたいわけではないのに逃げ腰になる私の舌を執拗に追いつめて絡めて。

私の思考力が段々と鈍っていって。

ただ、キスに溺れていく。

長い甘いキスを続ける潤さんの体温が私に伝わる。

唇も、まわされた腕も熱くて。

やっと唇が離されて。

ペロッと赤い色気のある舌で私の唇を舐める。

今更だけどピクン、と肩が跳ねて。

遅れて意識し出した鼓動が暴れだす。

今のキスで充分辛くなっていた呼吸が更に苦しくなって。

……顔がどんどん火照っていく。

「……美羽、かわいい」

かすれた声で私の耳朶を撫でる長い指と。

自分の唇を舌で舐める仕草が色気がありすぎて。

私には直視できない。

本当に何て破壊力をもつ人なんだろう。

「……はい、美羽」

俯いた私をからかうように私の右手を取って。

手の平にポン、と小さな箱を乗せる。

「……え?」

「ホワイトデーだからね、今日」

「……!」

最近の自分自身の情緒不安定ですっかり忘れていた。

……今日ホワイトデーだったんだ。




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