イジワル上司に甘く捕獲されました
私も潤さんに恋をして初めての自分に出会った。

本当に好きな人に嫌われることが恐くて溜め込みすぎて、ひたすらイイコになろうとしてしまう自分や。

独り占めしたくて、誰にも目を向けないで欲しいと願う余裕のない自分。

猜疑心ばかりが膨らんで心の中がドロドロになってしまう自分。

あまり嬉しくない姿だけどそれも間違いなく自分で。

そんな私をひっくるめて受け入れてくれている潤さんにかなわないな、と思う。

私の送別会を札幌支店の皆さんが開催してくださった時、峰岸さんに言われたことは仕事の労いだけだった。

隙のないスーツ姿に穏やかな微笑みを浮かべて、完璧に手入れされた手を差し出された。

元の支店に戻っても自信をもって頑張りなさいよ、と。

自信と気品に溢れた姿は本当に綺麗で同性の私も見惚れる程だった。

……いつかこんな素敵な女性に上司になりたいと思う。

心から、そう思っていた。

勿論。

仕事をいつも丁寧に教えてくださって、どんな時も私を助けてくれた藤井さん、金子さんにも感謝の気持ちを込めた挨拶をして。

何処までが本気かわからない軽い様子なのに、仕事はバッチリで、観察眼が鋭くて、いつも、然り気無く潤さんや私を助けてくれる桔梗さんにも。

穏やかにいつも部下を見守ってくれる皆川さんにも。

伝えたいお礼、感謝は尽きることがなく。

……札幌に来て良かった。

そう思わせてくれる人に、場所に出会えて私は本当に幸せだ。

……これから実家に戻ったら。

きっと私は寂しくなってしまうだろうけれど。

……前を向かなきゃ。

潤さんに似合う魅力的な女性になるために。

峰岸さんのようなや仕事ができる素敵な女性になるために。

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