イジワル上司に甘く捕獲されました
先刻のピシッとしたスーツ姿から一転。

ラフな黒いTシャツ、ベージュのチノパンの裾を無造作に折り上げて、足元にはサンダル。

何でもないスタイルなのにビックリするくらいかっこ良い。

まるで雑誌から抜け出してきたモデルさんか何かのよう。

「こ、コンバンハ……」

一瞬見惚れてしまったことを誤魔化すように挨拶をする。

彼は無言で私を一瞥して。

エレベーターの中に香水の香りが漂う。

何とも言えない微妙な雰囲気の中、エレベーターが一階に到着するやいなや。

「し、失礼シマス」

それだけ言って私はそそくさと移動。

彼は特に何も言わず、スタスタとマンションの外に向かって歩き出していた。

「……何なの、もう……」

知らない間に呼吸を止めてしまっていたらしい私は息苦しさに気付いて深呼吸。

私だけがアワアワして身構えていることが何だか悔しい。

恐らく年上なんだろうけれど。

完全に上から目線だし。

そんなことを考えながら。

真央のメモに記載されていた所定の位置に段ボールを置く。

それから、まだまだ残っている段ボールを片付けるべく部屋に戻る。

段ボールだけでもさっさと出してしまおうと思っていたけれど、途中で宅配便屋さんが来たり、母から電話があったりして思いの外、時間がかかってしまっていた。






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