イジワル上司に甘く捕獲されました
お腹が空いていたことも、帰り道でしようと思っていた買い物も。
全部放り出して私はひたすら駅まで歩いた。
明るい光を目のなかに入れたくなくて、こんな自分を誰にも見られたくなくて、俯いてホームに滑り込んできた電車に乗り込む。
駅の改札を俯いたまま足早に抜け、自宅までの道を唇を硬く引き結んで歩き続ける。
周囲から見たらただの暗い女だ。
だけど。
凍るような寒さから解放された本格的な春が近い金曜日の夜は。
歓送迎会、女子会やデート、買い物……色々な用事で楽しく外出している人も多い。
重たいコートを脱ぎ捨てて軽やかで華やかな色合いに身を包んだ人、鮮やかなディスプレイのお店に彩られた街はとても明るいというのに。
私は一人足取りが重い。
ただ自宅に辿り着くことだけを考えて、やっとの思いでマンションの玄関ドアの鍵を開ける。
「美羽?
あらやだ、早かったわね、
パパかと思ったのに」
鍵を開ける音が聞こえたのか、父を出迎えるため玄関にいた、母ののんびりした声に。
「……拓斗が急に仕事で会えなくなったから」
と一言返事をして足早に自室に入る。
母は拓斗と私が付き合っていることを勿論知っているけれど。
今は明るく友達宣言されました、とは言えず。
とりあえず誤魔化した。
ご飯は?と背中に母の声が追いかけてきたけれど、小さく首を振って断って。
パタンとドアを閉めた途端。
重い溜息をつく。
……ショックだった?
別れたから?
急に別れを言われたから?
本当は自分でもよくわからない。
だけど。
嫌なこと、辛いことは重なるもので。
拓斗との別れが決定打で。
私の心は悲鳴をあげていた。
全部放り出して私はひたすら駅まで歩いた。
明るい光を目のなかに入れたくなくて、こんな自分を誰にも見られたくなくて、俯いてホームに滑り込んできた電車に乗り込む。
駅の改札を俯いたまま足早に抜け、自宅までの道を唇を硬く引き結んで歩き続ける。
周囲から見たらただの暗い女だ。
だけど。
凍るような寒さから解放された本格的な春が近い金曜日の夜は。
歓送迎会、女子会やデート、買い物……色々な用事で楽しく外出している人も多い。
重たいコートを脱ぎ捨てて軽やかで華やかな色合いに身を包んだ人、鮮やかなディスプレイのお店に彩られた街はとても明るいというのに。
私は一人足取りが重い。
ただ自宅に辿り着くことだけを考えて、やっとの思いでマンションの玄関ドアの鍵を開ける。
「美羽?
あらやだ、早かったわね、
パパかと思ったのに」
鍵を開ける音が聞こえたのか、父を出迎えるため玄関にいた、母ののんびりした声に。
「……拓斗が急に仕事で会えなくなったから」
と一言返事をして足早に自室に入る。
母は拓斗と私が付き合っていることを勿論知っているけれど。
今は明るく友達宣言されました、とは言えず。
とりあえず誤魔化した。
ご飯は?と背中に母の声が追いかけてきたけれど、小さく首を振って断って。
パタンとドアを閉めた途端。
重い溜息をつく。
……ショックだった?
別れたから?
急に別れを言われたから?
本当は自分でもよくわからない。
だけど。
嫌なこと、辛いことは重なるもので。
拓斗との別れが決定打で。
私の心は悲鳴をあげていた。