イジワル上司に甘く捕獲されました
現在午前七時五十五分。
当たり前だけれど、支店の前には誰もいない。
札幌支店が入ってるビルには他のテナントさんも入っているけれど、この時間には何処も営業していない。
一応、全国何処の支店でも、午前八時から八時十分の間に鍵当番の上司が出勤して鍵を開けることになってはいる。
そろそろかな、とチラッと腕時計に視線を落とした時。
「おはようございます、橘さんかな?」
柔和な笑顔を浮かべた三十代後半位の男性が私に声をかけた。
「あ、ハイ……今日からお世話になります、橘です」
「早いね、待たせちゃった?
皆川です。
瀬尾の上司、と言ったほうがわかりやすいかな?
これからよろしくね」
瀬尾さんの上司、ということは間接的に私の上司になるんだ、と理解して。
「よ、よろしくお願いします」
と、頭を下げた。
皆川さんが鍵を開けてくれている間に、続々と札幌支店のメンバーが出勤してきた。
「おはようゴザイマス」
口々に朝の挨拶が交わされて。
私のことも皆川さんが軽く紹介をしてくれた。
「正式には後で朝礼で紹介をするからね。
橘さんの上司になる瀬尾は今日は取引先に直行で、昼前には戻るから、その時に改めて紹介をするよ」
キビキビと私をビル内に促しつつ、皆川さんが言う。
「皆川さんっ、その人が橘さんですか?」
突然背後から割って入った、明るい高い声。
振り返ると、長めのショートカットにすらっとした長身の女性が立っていた。
「ああ、おはよう、藤井さん。
そう、今日から一緒に仕事をする橘さんだよ」
立ち止まって皆川さんは私に向き直る。
「橘さん、同じプロジェクトチームを兼務する藤井さんだ。
橘さんより……一年先輩になるのかな?」
「初めまして、藤井莉歩です。
よろしくねっ」
サッと白くて細い手を差し出してくれる藤井さん。
私は慌てて手を握り返す。
「た、橘ですっ。
どうぞよろしくお願いしますっ。
不慣れなので、い、色々と教えてくださいっ」
「橘さんって噂には聞いていたけれど、本当に小柄で可愛いわねぇ、嬉しいわ!
何でも聞いてね、これから一緒に頑張りましょうね!」
う、噂?
藤井さんの返事に疑問を抱きながらも私は曖昧に笑う。
何はともあれ、優しそうな先輩、上司で良かったと思いながら。
当たり前だけれど、支店の前には誰もいない。
札幌支店が入ってるビルには他のテナントさんも入っているけれど、この時間には何処も営業していない。
一応、全国何処の支店でも、午前八時から八時十分の間に鍵当番の上司が出勤して鍵を開けることになってはいる。
そろそろかな、とチラッと腕時計に視線を落とした時。
「おはようございます、橘さんかな?」
柔和な笑顔を浮かべた三十代後半位の男性が私に声をかけた。
「あ、ハイ……今日からお世話になります、橘です」
「早いね、待たせちゃった?
皆川です。
瀬尾の上司、と言ったほうがわかりやすいかな?
これからよろしくね」
瀬尾さんの上司、ということは間接的に私の上司になるんだ、と理解して。
「よ、よろしくお願いします」
と、頭を下げた。
皆川さんが鍵を開けてくれている間に、続々と札幌支店のメンバーが出勤してきた。
「おはようゴザイマス」
口々に朝の挨拶が交わされて。
私のことも皆川さんが軽く紹介をしてくれた。
「正式には後で朝礼で紹介をするからね。
橘さんの上司になる瀬尾は今日は取引先に直行で、昼前には戻るから、その時に改めて紹介をするよ」
キビキビと私をビル内に促しつつ、皆川さんが言う。
「皆川さんっ、その人が橘さんですか?」
突然背後から割って入った、明るい高い声。
振り返ると、長めのショートカットにすらっとした長身の女性が立っていた。
「ああ、おはよう、藤井さん。
そう、今日から一緒に仕事をする橘さんだよ」
立ち止まって皆川さんは私に向き直る。
「橘さん、同じプロジェクトチームを兼務する藤井さんだ。
橘さんより……一年先輩になるのかな?」
「初めまして、藤井莉歩です。
よろしくねっ」
サッと白くて細い手を差し出してくれる藤井さん。
私は慌てて手を握り返す。
「た、橘ですっ。
どうぞよろしくお願いしますっ。
不慣れなので、い、色々と教えてくださいっ」
「橘さんって噂には聞いていたけれど、本当に小柄で可愛いわねぇ、嬉しいわ!
何でも聞いてね、これから一緒に頑張りましょうね!」
う、噂?
藤井さんの返事に疑問を抱きながらも私は曖昧に笑う。
何はともあれ、優しそうな先輩、上司で良かったと思いながら。