イジワル上司に甘く捕獲されました
ただ、去り際に。

「橘さん、今度飲みに行こう!」

と、バッチリ誘ってくれた。

「……ビックリしたでしょ?
桔梗さんって、仕事が本当にできる人なんだけど、あの通り軽いのよね。
上司だけれど、年次も近いからただの先輩みたいな気もするのよね……」

藤井さんは呆れ顔を浮かべて。

「まあ確かに外見が良いから、モテる人なんだけど、あの軽さがね……。
橘さん、本当に素直で可愛らしいから、気をつけてよ!」

本気とも冗談ともつかない顔で言う。

「い、いえ、そんな私は……。
桔梗さん、出張だったんですか?」

「うん、桔梗さんって橘さんと同じ今回のプロジェクトの為に本部から来た人なの。
簡単に言うと助っ人って感じかな?
一応、本部と札幌支店兼務ってかたちになっているから、度々、状況説明とかも兼ねて東京に出張しているの。
今日は東京の本部から直行だったのよ。
……あっ、と。
ごめんね、私、とりあえず行ってくるね!」

早口で説明してくれて、藤井さんは再びバタバタと走っていった。

私は今までの慌ただしい出来事を反芻しながら、とりあえず食堂に向かった。
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