イジワル上司に甘く捕獲されました
そんな私を桔梗さんは一瞬、動きを止めてマジマジと見つめる。

「え?
嫌がらせ?
潤が?」

「……いえ、その。
何て言うか、からかわれてばかりのような……」

無意識にしかめっ面で話してしまう私。

直属ではないにしろ、上司にこの態度は社会人としてダメだ、と思ったのも束の間。

ブハッと盛大に笑い出す桔梗さん。

「マジで?
潤が?
からかう?
スゴいね、美羽ちゃん、潤に気に入られたね!」

上司?と首を傾げたくなるくらいの軽いノリで笑い続けている桔梗さんに、私は戸惑いながら。

「……何処がですか?
全然ですよ、むしろ嫌味を言われてばかりのイメージが……」

引っ越しの出来事を思い出しつつ言う。

桔梗さんとはさっき話したばかりだけれど、明るい雰囲気のせいか、アレコレ話してしまう自分がいた。

……桔梗さんも黙っていたら皆が振り返る美形男性に違いないのだけれど。

このノリが何だか勿体無いような……。

「いや、潤と面談して目がハートになっていない女子、初めて見たなあと思ってさ!
潤って無愛想で俺には冷淡な奴だけど、俺には負けるけどなかなか美形くんでしょ?
もてるんだよ、アイツ。
俺ももてるんだけど、潤には負けるんだよね、何でかな?」

どう返していいかわからないことを相談されて。

「人それぞれの好みじゃないですか……?」

精一杯の返事をする私に。

またまた破顔する桔梗さん。

「やっぱり面白いね、美羽ちゃん!
可愛いし!
本当、俺の部下になりなよ」

「……何でお前の部下に橘がなるんだよ」




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