イジワル上司に甘く捕獲されました
優しい人
「よろしくお願いします」

笑顔を浮かべて支店の、一人一人にお酌をする私。

広い畳のお座敷に20人くらいの人が歓談をしている。

業務中にはなかなか接点がなかったり、顔を合わせなかった人もいて何だか新鮮で。

藤井さんが教えてくれた評判のお魚料理もまだ、口にはできていないけれど。

今まで女性社員はお酌をする、と暗黙のルールになっていたところ、お酌をする、しないは個人の自由という風に明確にわが社の方針は変わったけれど。

私は絡まれたりするのは嫌だけど、ただ、ご挨拶やお礼とかでお酌をすることは必要だなと個人的に思うので、今日はお酌をしていた。

ただ、お酒はほぼ全く飲めないことが私の欠点だけど。

真央はとてもお酒が強くてそんなところも正反対なんだけれど。

皆、飲める方はほろ酔い加減で楽しそうに話していて、和やかな雰囲気だった。

瀬尾さんは取引先との約束が終わり次第、合流するとのことで。

「美羽ちゃん、そろそろ何か食べたら?」

金子さんが心配そうに私を席に呼び寄せてくれた。

金子さんの向かい側に座る藤井さんも料理を取り分けてくれる。

「ありがとうございますっ。
実はもうお腹ペコペコで……」

「でしょ?」

正直にそう言うと二人は笑ってくれて。

お二人の厚意に甘えてお料理を口に運ぶ。

「美味しいです!」

藤井さんがオススメだと言ってくれたお料理はどれも美味しくて。

私は思わずパクパク食べる。

金子さんがお酒が苦手な私のために、店員さんを呼んで飲み物を注文してくださって。
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