イジワル上司に甘く捕獲されました
飲んだり食べたりを繰り返していたら。

藤井さんの隣にグラス片手にやって来た桔梗さん。

「美羽ちゃん、いい食べっぷりだね」

「……っ」

口に食べ物を詰め込んでいるところだったので、急に話しかけられてむせる私。

「だ、大丈夫?
もうっ、桔梗さん、いきなりすぎですよ」

慌てて私におしぼりを渡してくれる藤井さんと私が頼んだウーロン茶を渡してくれる金子さん。

ウーロン茶を飲み干すと、少し落ち着いて。

「……桔梗さん、何故ここに……」

「だって俺、藤井の上司だし。
美羽ちゃん、今日の主役だし」

「……何を意味わからないこと言ってるんですか?
あちらの預金係さんと今日はとことん飲む約束されたんじゃないんですか?
夕方言ってましたよね?
……しかも。
美羽ちゃん、ってどうしていきなり下の名前を呼んでいるんです?」

「いいんだよ、今まで散々飲んでたんだから。
大野さん、酒強すぎでさ」

大野さん、という預金係の役職者さんを見て身震いする桔梗さん。

「金子さんだって美羽ちゃん、って呼んでるだろ。
藤井も下の名前で呼んでやるっていつも言ってるのに、拒否するからだろ。
まさかヤキモチ?」

桔梗さんが言うと、藤井さんは冷たい表情で。

「……明日から困っていてもサポートしませんよ」

と冷徹な一言。

その言葉に焦る桔梗さん。

その時、背後でワアッと一際大きな声が響いた。

「お疲れ様です。
遅くなりました」

王子様のように完璧な笑顔を浮かべて瀬尾さんが部屋に入ってきた。


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