イジワル上司に甘く捕獲されました
「え?
瀬尾さん、だっけ?
美羽ちゃんをお姫さま抱っこして、鞄とか肩に掛けて連れて帰ってきてくれたんだよ。
すっごく素敵だった!
美羽ちゃん、お姫さまみたいだったよ。
でも……ごめんね、写真は撮れてなくて……」

大いなる勘違いで残念そうに言う真央。

「いいから!
写真とかいらないから!
っていうか、ちょっと待って!
……瀬尾さんが連れて帰ってきてくれたの……?」

「そうだよ」

ニコッと微笑む真央。

その瞬間、頭痛がしてきた。

そしてみっともない姿を晒してしまった恥ずかしさと、迷惑をかけたこと、お、お姫さま抱っこまでしていただいた申し訳なさが込み上げてきて、もうどうしてよいかわからず頭を抱える。

「美羽ちゃん、大丈夫?
頭痛いの?」

「……大丈夫……精神的に痛いの……」

俯いてショックを受けている私に。

「あんなイケメンさんが真上に住んでいたなんてね。
私、全然知らなかったなぁ。
しかも上司だなんて本当にすごい偶然だよねっ」

再び嬉しそうな様子の真央。

あれ、ちょっと待って……。

「真央、何で瀬尾さんが私の上司って知ってるの?」

私は話していない筈。

「名刺くれたよ、ほら。
美羽ちゃんが急変したり、何かあったら連絡くださいって、携帯電話の番号まで書いてくれたの」

薄い蜂蜜色のネイルを綺麗に施した指で真央が私に名刺を差し出す。

確かにそれは瀬尾さんの名刺で。

手書きの携帯電話の番号も記載されていた。



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