イジワル上司に甘く捕獲されました
「そう、札幌支店」

「ええっ、さ、札幌支店ですか?
な、な、何故、です、か?」

思考回路がやっと動き出して私は素っ頓狂な声をあげる。

「うーん、まぁ、簡単にいえば人手不足だね」

慌てる私とは裏腹に落ち着いて返事をする片山部長。

「札幌支店って、橘くんも知っているだろうけれど北海道に一店舗しかないんだよ。
しかも北海道は広い。
となると札幌支店に通勤できる地元の女性は限られているんだよ」

溜息を吐く部長。

「なかなか人材が見つからなくて、いつもぎりぎりの人員でねぇ。
しかし、なかなか大きな店舗で取引先も多岐にわたるんだよ」

「……はあ」

「それが今回、大きなプロジェクトが持ち上がってね。
北海道を中心に展開している企業の社員向けの提携サービスを当社が受注したんだよ。
かなりの規模だから本社が管轄しようかとしたんだが、先方は札幌支店をかなり気に入っていてねえ。
札幌支店が担当してほしいって言うんだ。
まあ、その方が何かあったときにすぐに動けるから良いのだが……。
このプロジェクトは我社の業績にも大きく影響するんだ。
何分、そのために準備することやプロジェクトが始動してからも落ち着くまではそれにかかりっきりになる人材が必要なんだよ。
基本的な対応や先方との折衝は営業担当者が出来るが、支店内部で対応できる人材が必要でね」

……大体の部長が言いたいことの主旨は理解できたけれど。

「……あの、そんな重要なプロジェクトにまさか……」

「そう、君にお願いしたくてね」

ニッコリと人のよさそうな笑顔で片山部長は私を見た。


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