イジワル上司に甘く捕獲されました
多めに茹でた素麺をペロリと瀬尾さんは食べて。

「橘はちっこいし、本当に軽かったんだからしっかり食え」

と半ば強引に食べさせられて私はお腹がいっぱいになった。

ちっこい、ちっこいってさっきからやたらと連呼されてしまっているけれど。

百八十センチ近い瀬尾さんや桔梗さんに比べたら誰だって小さいと思うし。

身体の大きさが違うのだから食べる量も違うのだけれど。

反抗しようとすると物凄い眼力でにらまれそうになるので黙っていただいた。

片付けをかって出た私に代わってテーブルを拭いたりしてくれる瀬尾さん。

何だか札幌支店にいる上司の瀬尾さんとは雰囲気が全く違っていて戸惑ってしまう。

……何だか可愛らしい一面が見れた気がする。

自宅ではこんな雰囲気なんだな……きっと支店の人が……女の子達が見たらビックリしちゃうだろうな。

特別な姿を私だけが見ることができた気がして何故だか嬉しくなる。

その時。

瀬尾さんのスマートフォンが鳴った。

何気なく液晶画面を見た瀬尾さんが険しい表情をする。

そうこうしているうちに呼びだし音が止まって。

再びまた鳴り始める。

チッと舌打ちをして嫌そうに瀬尾さんが電話に出る。



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