イジワル上司に甘く捕獲されました
甘えてはいけないのだろうけれど。

真央がいなくなって。

私以外の誰の気配も感じない家は何だか寂しくて。

子どもみたいだけど何だか慣れない。

そんな時。

無意識に見上げてしまう真上の天井。

時折、微かに聞こえる足音や物音に。

何故かホッとする自分がいて。

私が思う以上に私にとって瀬尾さんの存在は大きいみたいだ。

真央が一方的に取り付けた約束なんて放っておけばいいのに。

面倒臭がりな筈なのに。

意外と律儀な瀬尾さんはその約束を守ってくれている。

毎週木曜日くらいになると週末の予定を記載した素っ気ないメールを私に送ってくれる。

私はそのメールに自分の予定を確認して返信して、食事の日程をお互いに決めている。

瀬尾さんの自宅、もしくは私の自宅で一緒に料理をして食べたり。

近所に食事に出掛けたり。

瀬尾さんは私の彼氏ではないのに、私よりも私の好みを最近では理解してくれていて。

当たり前のように一緒にいてくれている。

「何かあったら電話するか、直接部屋に言いに来いよ?」

いつも別れ際に言われる言葉。

私に言い聞かせるように。

ポン、と頭を撫でて真剣な表情で言う。

最初の頃のように緊張しすぎることは、さすがになくなったけれど。

至近距離で見る瀬尾さんの整いすぎた外見は心臓に悪いし、すぐに顔が赤く染まってしまう。

不意に見せてくれる優しい笑顔に鼓動は速まるし、こまってしまうことはたくさんだ。

瀬尾さんはそんな私をいつもクスクス面白そうに笑っている。

だけどそんな時の瀬尾さんの瞳はビックリするくらいに優しくて私はいつも直視できずに俯いてしまう。




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