イジワル上司に甘く捕獲されました
この相談を拓斗にしようと思っていた日に。

別れを告げられて。

私はまだ迷っていた。

他の社員には話さないようにと片山部長に口止めされていたので、同期にも話していない。

真央に相談したかったのだが、ここ二日くらい、時間帯がすれ違っているのか、なかなか電話が繋がらない。

私は大学も地元で、就職して配属された店舗も自宅から通える範囲だったので、ずっと実家暮らしをしている。

今回、札幌に赴任した場合は初めて実家から出ることになる。

そんなことをぼんやりと考えていると、私のスマートフォンが鳴った。

液晶画面には真央の名前が表示されていた。

私は電話に飛び付いた。

「真央っ?」

「うわっ、ビックリした。
どうしたの、美羽ちゃん、そんな大きな声で。
何かあったの?
今、部屋なの?
ご飯は?」

矢継早に質問する真央。

どっちが姉なのかわからないな、と苦笑しながら私は返事をする。

「ごめんね、真央。
今は部屋で、ご飯は食べました。
ちなみにお風呂も済ませたよ」

現在午後十時過ぎ。

「真央は?
ご飯は?」

美容部員をしている真央はシフト制で、帰る時間も日によって違う。

遅い日は帰宅が午後十一時くらいになることもある。


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