イジワル上司に甘く捕獲されました
手元の書類を取り上げられてあっという間に営業フロアから押し出されて。

私はフラフラとロッカールームに向かう。

体調が悪いわけではない。

風邪もひいていない。

しっかり睡眠もとっている。

お昼ご飯もさっきしっかり食べた。

……だけど。

今は食欲なんてないし、眠れそうにもない。

痛い場所はひとつ。

胸が痛い、何かに切り裂かれたみたいに。

……今、下を向いたら涙が零れそうだ。

身体の何処かでギリギリの理性で叫び出したい自分を抑えている気がする。

理由は……。

瀬尾さんのお弁当、だ。

どうして?

どうして私はこんなにショックを受けているの?

……私。

気付かずにいた。

ううん。

気付かないふりをしてきた。

傷付きたくなかったから。

手が届く人ではないから。

私。

……瀬尾さんが好きなんだ……。

ポコンと浮いてきた言葉は。

ストン、と私の胸に落ちて。

まるでそこがずっといる居場所の様にしっくりする。

そう。

……私は瀬尾さんが好きだ。


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