ニセモノ*短編
ニセモノ
ありえない
「え…?」
嘘でしょう?
「…黙っててごめん。」
冗談だって
「けっ…こん、て」
そう言って笑ってみせてよ
「うん。だからもう梨華には会えない。ごめんな。」
「嘘でしょ?ねぇ?」
必死で智にしがみつく
端から見れば酷く醜い画だろう。
でも信じられなかった。
信じたくなかった。
私の彼氏であるはずの智が結婚してただなんて。
「…うそ…。」
「ごめん。…じゃあな…。」
そう言うと智は泣きじゃくる私の頭をぽんぽん、と撫でて寂しそうな顔で家を出ていった。
最後にそんなことしないでよ。
忘れられないじゃない。
最後くらい酷い男になって
あなた嫌いにさせてよ。
涙が止まらない。
大好きだったのは私だけ?
遊びだったの?
好きだって言ってくれたのも全部嘘?