ニセモノ*短編
拓(タク)と付き合うようになってから
しばらくが経ったある日

社内の廊下で智とすれ違った。

今までは逃げ出したくて仕方なかった瞬間。

でも今回は違う。

ふっ、と普通にすれ違い、いつの間にか自分の心が智から離れていたことに気づかされた。

…拓のおかげなのかな。

智が居なくなった心が寂しくないのは

彼のおかげ…?


「あっ吉野さん、ちょっと質問なんですけど…」

「ん?」


デスクに戻ると拓が話しかけてきた。

なんか…変だわたし。

認めたくないけどちょっとドキドキしてる。

彼に話しかけられるとなんか嬉しい。

本気で恋愛する気なんてなかったのに

もう傷つきたくないから…

智から離れるために


ちょっとあそぶだけ、のつもりだったのに



…本気になってもいいのかな?


震える携帯には拓からのメール。


"今夜会える?"


もちろん、と返事を送り仕事を再開した。



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