ニセモノ*短編
その夜

いつものように二人、ベッドで話していると

一瞬の沈黙のあと拓が真剣な顔で此方を見てきた。


「梨華…」


やだ

やだ

聞きたくない。

その顔は絶対良い話じゃないんでしょう…?


「…ん、……なに?」

「実は俺彼女居たんだ。」


ほら、ね。
やっぱり。


「…うん」

「でも、」

「でも何?もういいよ。」

「…え、梨華?」

「あたしたちなんて始めから終わってたようなもんでしょう?」


智を忘れるため、でしょ?
本気になるつもりなんてなかった。


「…」

「やっぱり私は智じゃなきゃ駄目だったのよ。」


もう私の口からは嘘ばっかり。

泣かないように
負けないように

悟られないように


「…そっ…か」

「もう、会うのやめようか。」


服を整え、バッグを手に
テーブルには部屋代を置いて。


「じゃあね、伊藤くん。」



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