三人のイケメンパパと、小さな月姫
井上さんは、俺の問いには答えず
また泣き出してしまった
真木がドサリと
ベンチに座る
「…真木、100km打てたか?」
「ダメだ…
そもそもオレ乱視だから
メガネないと、全てが魔球だ…」
「なんだべなそれ!」
「クルマに置いて来た…
取りに行くのダリぃ…」
ちょうどよくというか
冷めてしまったコーヒーを
ゴクゴク、喉を鳴らして
真木が一気に飲み干した
「行くなら行くぜ? カレシんトコ
あんまり遠くなら、ウチのヘリ出すし」
… 冗談じゃなく、こいつマジで
自家用ヘリ 持ってるからな…
だけど井上さんは
やっぱりそれを、冗談と取ったのか
… それとも勇気が出ないのか
必死に涙を拭うままだ
「――… 真木」
「 あ? 」
「ちょっと、そのバットさ貸して」