三人のイケメンパパと、小さな月姫



――… 遅い




口には出さないけど
皆、そう思っているのは間違いない


空はもう、茜色から
群青色に染まっていて


… 部活とかある日は
夜の八時過ぎに帰るとか
俺も普通にあったけど


一応、井上さんが
『いきなり行くのは怖いと』言い
メールを一通送ったんだけど
その返信も、まだ無いのだ




「… バイトしてるとか、聞いてる?」


井上さんは 首を横に振る



「真木?」


真木が、車の外に出た


… 部屋はここからも、様子が伺えて
居間らしき所には、明かりがあるけど
横の部屋は カーテンが引かれたまま真っ暗


… 訪ねて行くつもりか?




真木の影は
スッと入口に消えたかと思うと
すぐに車に向かって戻って来た


「イノウエさん」


井上さんは、恐る恐る
『はい』とだけ返事


「カレシ
もうこのマンションには
住んでないってさ」


「… え」


「――― は?!」



予想だにしない、結果 ―――




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