三人のイケメンパパと、小さな月姫



「この辺が、真木ちゃんらしいと言うか
先日立ち上げたばかりな
新事務所の利点というか…


"ウルセー事は言わないんで
とにかくカノジョ達の魅力を
オマエらしく引き出してくれ!"って
それだけが条件なんだ」




「…魅力」


「―――確かに、破格の条件で

"自分で撮る"ってチャンスに恵まれたけど
ここでのアシスタントの仕事と並行して
雑務も変わらず、熟す事になる

大変だよ」


「…はい!それは」


もちろん、判ってる ―――




「とりあえず、アイデア出して来い
来週までに、簡単な奴でいいから」




煙草を吸いながら、ニカリと笑うボスと
書類を整理しながら笑う、早河さんを後に
お辞儀を目一杯して、部屋から出た…




―― ずっと、ひとりで撮ってた



最初は ホームビデオで風景


編集がしたくなって、PCを買い
初歩的な、切って繋げてを
Movie Makeでやっているうちに
どんどん面白くなって行って
Effective Proで、特殊効果をつけて…


ここで働ける様になったきっかけは
"魚が空に憧れるストーリー"

ショートフィルムコンテストに出して
まんまと一回、落選した奴




それを撮影したカメラや機材は
映画が好きとも言えない状態の
ただ遊んでた、大学時代

サイトと雑誌を見ながら
使いもしないのに、とにかくブランド
評判がいいのを、手に入れてた




ここで、『何を使ってたんだ?』って
皆と飲んでて聞かれた時
『はぁ?!お前どこのプロ?!』って
蹴り入れられた、そういう物 ―――




だけど、自他ともに
『これはいい』って思えたのは


ただ、古いケータイで撮っただけの
あの子が笑う、ムービーなんだ…




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