三人のイケメンパパと、小さな月姫



「まぁ… それは仕方ないよな
男の幸福と、女の幸福は、違うから」


「……」



仕事を終えた、夕暮れ時 雨の駅前


赤い提灯
おでんの屋台


今日は走り回っていて
昼をまともに取れず
"美味そうなニオイだな"
そう思って、通りすぎようとした時

吉田さん
うちの会社のボスに
後ろから、声をかけられた


ちくわぶ、大根
コップには、ビール




「女の人はほら

恋=人生だけど
男は自分の人生と恋とは
ほんと、別物だからなぁ」


メガネを曇らせながら
玉子を丸呑みするボス




…昔は、恋ってもの自体
よくわからなくて…

そして、初めて知って
恋=人生みたいに
一時期の俺は、なってたけど…




「んで?岡田の悩みはその
心境の変化だけ?」


「…… その」


――― 多分

俺の様子がおかしいのを判って
…ホントこの人はそういう

目に見える物から
見えない部分、気がついたり
そういう変化に目ざといから
声かけてくれたんだろうけど


赤ん坊の事は
言わないほうがいいよな…

前にも相当、迷惑かけてるし…


「え…と
プロモーションビデオの、事で」






< 56 / 203 >

この作品をシェア

pagetop