【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
それに歩くペースが速くて雨に濡れてしまう。
「うっわ……アレ、超ダサい」
「えっ?」
ドン引きな顔で足を止めた山本くんに言われて見つめた先には、お母さんの働くカフェが見える。
そしてお店の入り口付近には中年の男性を見て、深々と頭を下げるお母さんの姿があった。
その光景はどう見ても、謝罪をする店員さんと、怒っているお客さんだ。
「ぷっ。必死だね?あの店員のおばさん」
「……っ、」
「オレらの親と同じくらいの年じゃね?」
「……、」
「うっわ、ないわー。はずかしっ。アレが親だったら、オレ死にたくなる。誰かに見られたら恥ずかしいもんなぁ。マジないわぁ」
ヘラっと笑って罵倒する山本くんの言葉の数々が、私の心に容赦なく突き刺さった。
けど、痛くなるほど握り締めた拳が震えのは……、
「あの人、私のお母さんだよ……」
口を衝いて出た声が自分で驚くほど冷たく感じた。